Background: 妊娠中の左心室拡張機能の変化についてはほとんど情報がない。 26歳から41歳(平均32歳)の健康な妊婦37名を対象に,僧帽弁流入量と肺静脈流のプロファイルを用いて左室拡張機能を評価した。
方法と結果 心エコー検査は各妊娠期の終わりに実施した。 8名の被験者(対照群)には産後1~3.5ヶ月(平均1.7ヶ月)同様の検査を行った。 妊娠中、心拍数の増加の結果、心拍出量は著しく増加し、一回拍出量はそれより少ない程度であった。 また、全身血管抵抗の有意な低下と左心室質量の増加も認められた。 拡張初期における僧帽弁流速のピーク値(E)は、13. 3%増加し、妊娠期間中は正常値の上位を維持した。 ピークA波速度(A)は妊娠第3期で最大に増加した。 対照群に比べ、妊娠第1期の被験者のE/A比は有意に増加した。 この比率は、A波速度の上昇を反映して、その後減少した。 肺静脈の収縮期前方流速は第2期をピークに増加したが(有意差なし)、産後はベースラインレベルに戻った。 肺静脈拡張期時間速度積分は第1期から第3期にかけて有意に減少した。 心房収縮時の肺静脈逆流速度のピークは、持続時間に顕著な変化はなかったが、有意に増加した。