四塩化錫の熱分解のキネティクスを実験および理論的に研究した。 第一原理分子動力学計算により、SnCl4は最終的に4つのSn-Cl結合解離経路を経てSn(3P)と4つの塩素原子に分解することが示された。 原子共鳴吸収分光法(ARAS)を装備したショックチューブを用いて、2組の動力学実験を実施した。 まず、塩素原子を1250-1700Kの温度範囲と1.7×1018から8.9×1018分子cm-3の全密度範囲において測定した。 初期反応段階であるSnCl4 (+M) → SnCl3(2A1) + Cl (+M) (eq 1a) の速度係数は、本条件下では低圧限界にかなり近いフォールオフ領域であることがわかった。 Cl-原子測定に基づく2次速度係数は、k1a2nd = 10-5.37±0.62 exp cm3 molecule-1 s-1 (2標準偏差レベルでの誤差)と決定された。 第二の実験グループは、2250-2950Kの温度範囲、3.2×1018分子cm-3の総密度でスズ原子を検出することにより行われた。 その後の反応ステップの2次速度係数を求めた。 SnCl2(1A1) (+M) → SnCl(2Π) + Cl (+M) (eq 3a) および SnCl(3P) + Cl (+M) (eq 4a) の2次速度係数はそれぞれ k3a2nd = 10-8.36±0.86 exp cm3 molecules-1 s-1 および k4a2nd = 10-9.50±0.78 exp cm3 molecule-1 s-1と求められた。 また、反応 1a と 3a に対して、変分的遷移状態理論を含む Rice-Ramsperger-Kassel-Marcus (RRKM) の計算を適用した。 RRKM計算に必要な反応物及び遷移状態の構造パラメータと振動数は、第一原理分子動力学計算から得た。 反応のエネルギー障壁(E0)は計算で最も重要なパラメータであり、RRKMの反応速度係数が観測値と一致するまで調整した。 その結果、反応1aのE0,1a = 326 kJ mol-1、反応3aのE0,3a = 368 kJ mol-1はSnCl4とSnCl2のSn-Cl結合解離エネルギーとよく一致し、実験データのk1aとk3aが理論的に妥当であることが実証された。